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ナニガナンダカワカラナイ

バーチャルな存在の「共同学校事務室」
「つかさどる」ってバージョンアップするんだってさ・・・

 2017年4月1日より施行された「共同学校事務室」、事務職員の「つかさどる」規定だが、1年を経過しようとするこの時期に、ジワジワと影響が出てきつつある。

 県教委は、12月にはこれまで行われてきた「学校事務の共同実施」を「共同学校事務室」にすること求める通知を、1月には「校務運営参画の推進」を進めるための通知を市町村教育委員会に発した。

 6級昇格のための「共同実施」

 もともと愛知県は共同実施については、事務職員の年齢構成や役職の構成など様々な課題があるとして、「冷たい」反応のところだった。

 しかし、給与構造改革や給与の総合的見直しを経る中で「一職一級」が徹底され、昇格に関する様々な運用が剥奪されてきた。特に6級昇格について、これまで事務長昇任後、5級に2年在給した後に6級昇格していたところ、市町村立学校事務職員は各学校一人の単数配置であることから2011年以降は昇格の道が閉ざされていた。そこで編み出されたのが「ブロック事務組織(共同処理組織)の事務ブロック長の職務」だ。

ア 担当する職員の指導育成を行うこと

イ 担当する職員の事務の割り振り、胆務に関する事務を処理すること

ウ 担当する職員の事務の繁閑を平準化し、効率的な業務運営を図ること

エ 担当する職員間の協力を促し、連携を図るため、ミーティングを定期的に実施し、職員間の情報共有に努めること

 市町村が共同実施組織を作り、その共同実施のグループリーダーが上記の「ア〜エ」の職務を担っていることが書類上分かれば6級昇格。・・・ということで2014年共同実施組織が愛知県下ほとんどの市町村で行われることになった(その区域内に小学校・中学校1校ずつという小さな自治体には作られなかった)。

 いいように(県に)使われるブロックリーダー

 このように共同実施は6級昇格のためのもので、その設置や運営はあくまで市町村が行うべきもの、県は関わらない、ということになっていた。ただ、共同実施を行うことによって諸手当認定事務や給与・旅費支給が適切に行われることを期待する、というスタンスだった(はず)。

 もっとも、現場(事務所)段階では、設置者である市町村の意向とはかかわりなく、様々な調査ものの取りまとめをブロックリーダーにさせたり、事務説明を全体会ではなく、ブロックリーダー会でお茶を濁したりと(県が持っていた)趣旨から逸脱した「共同実施組織の乱用」もあった。

 共同学校事務室法が施行されて以降、愛知県はこういう「いい加減な」共同実施でも「共同学校事務室」の名称で呼んでもいいのかを文科省に問い合わせ、OKの回答を得て、共同学校事務室通知に至った。もっとも、愛知県ではハード面での「事務室」のある学校はごく少数で、この「共同学校事務室」も名称だけ。実際に部屋がどこかにあるわけではないバーチャルな存在だ。

 6級昇格、確かに昇格メリットがあるし、退職手当の調整額もそれなりにあるが、厄介な仕事を押し付けられ、教員室の片隅でその厄介な仕事をしなければならない、さほどのインセンティブがあるとも思えない。

 愛知県の事務職員は昔から主事でも「つかさどって」きた

 学校教育法上の事務職員の職務規定が2017年4月より「従事する」から「つかさどる」に改定された。いろいろなところでその意義を説明されるのだが、よく分からない。要するに、「チーム学校」とか「学校における働き方改革」で事務職員にこれまで教員が担ってきた業務のいくつかを肩代わりさせるための方便ではないのか。

 しかし、愛知県では学校教育法の職務規定が「従事する」だったころから、その職務(もっともベースとなる主事の)は「つかさどる」だった。学校教育法とはかかわりなく「つかさどる」だったのであり、何を今さらと思うのだが。

 このことに関する組合の質問に対して、県教委は「これまでは『仕事を自らの責任に基づいて処理する』という意味合いで使ってきたが、これに加えて『校務運営参画を含める』ということになる。文科省の通知により、意味合いが被さったというように理解してほしい」と説明。

 何をさせようというのか

 通知文の「校務運営参画」の具体は次のようになっている。


学校事務職員の校務運営への参画の推進について

1 学校事務職員の強み

〇 学校における唯一の行政職であり、総務、財務事務や法規に関する知識が豊富であること。

〇 業務を通じて学校内外の様々な情報が集まりやすい立場にあること。

〇 学校全体を俯瞰的に見ることができ、公平な判断をし得る立場にあること。

〇 授業がある教員よりも、勤務時間中に学校内外の連絡調整や交渉役を担うことができること。

〇 他校の事務職員などとの横のつながりが豊富であること。

2 学校事務職員の強みを生かし、校務運営への参画を進めるための取組例

@ 学校事務職員に関する職務規定や職務権限等の整理

A 事務の共同実施など学校事務の組織体制の充実

B 学校事務の諸活動に対する管理職の理解・支援の促進

C 学校事務の諸活動、教員の教育活動に対する事務職員と教員の相互理解の促進

D 教員が担当している既存の分掌事務のうち、事務職員が担ったほうが効果的である事務の移譲

E 校内の諸会議への出席による事務職員の意見聴取及び校内の情報共有

F 起案等校内の意思決定過程における学校事務職員の関与

G 管理職等が行う校内巡回への同行

H 学校事務に関する諸活動の学校内外への情報発信

I 予算の編成や執行に関する教員との連携

J 学校行事への事務職員の関与・参加

K 保護者や地域との連携事業への事務職員の関与・参加


(上記「2具体例」の丸付き数字は記事の都合で組合がつけたもの。原本は「○」で表示されている)

 「1強み」に係れていることは一般的に語ることができることなのか。一つ目の○は、学校事務職員のあるべき姿を示しているのか、現状認識を示しているのか。二つ目以降の○は、事務職員ばかりでなく(よりは)校長・教頭・教務主任・校務主任にも当てはまることではないのか。「強み」にあげられていることは、一般的に語られることではなく、市町村によって、学校種別によって、個々の学校によって、また、事務職員の経験年数によって、千差万別なことだ。

 「2取り組み例」の@〜Cについては市町村教委が不断に考えるべきこと。職場での具体例はD以降のことになるが、そのうちのいくつか(EFIJ)はすでに日常的に行っていることで、それらが「(校務運営参画という)意味合いが被さった」というほどのものでもない。一方、Dのような「教員の仕事の押し付け」まがいのことや、Gのような管理職の校内巡回に付き従わせて何をさせたいの?、Kのような「保護者や地域との連携事業」のようにウィングを広げすぎることが学校の多忙化を招いているのではないか、というような「余計なお世話」な項目もある。

 各項目の出典はどこなのかという組合の質問に対して、県教委は「文科省の通知が出典ではない。他県の取り組みを参考にしている。学校事務職員の職務内容は都道府県によってそれほど変わるものではない」と。

実情を検討することのない「つかさどる」って軽くなったものだ

 事務職員の仕事は、職場によっても、市町村によっても、都道府県によっても異なる。それは、ハード面としての事務室があるのか否か、校務主任という他県にはない教員もいる。一般的には「学校事務職員の職務内容は都道府県によってそれほど変わるものではない」かもしれないが、他県とは大きく異なることがある以上、安易な横引きは無責任としか言いようがない。

校務主任
1967年に設置された教員の職制。当時は事務職員は全校配置されていなかったので、庶務・経理・管財といった業務は校務主任の業務とされていた(ようだ)。1974年に事務職員が全校配置されたが、その前年の1973年に「(事務職員の)職の設置の基準」が県教委から出され「校務主任の職務と事務職員の職務とが競合しているとの声もあるが・・・校務分掌を定める場合は7・・・校務主任と事務職員の相互の機能分担が明確となるよう配慮すべき」とされた。その後半世紀が過ぎてある学校の学校運営機構(校務分掌)をみると、帳簿・備品・防災設備・校舎施設・営繕・学年会計・学校会計・・・は校務部に位置づけられている。

 もっとも、このような組合の指摘に対して「組合が言うように『強み』となる事柄は、市町村によって、学校種別によって、事務職員の経験によって異なることはその通り。したがって、通知にある事柄のすべてをやれというものではない。文科省が『かぶせたもの』を個々の実情に応じて主体的にやっていくきっかけになればいいというのが県教委の立場。教育事務所にもそのように通知してほしいということは言っている」と市町村に丸投げ。

 「2取組例」のうちのいくつかは、最近の「学校における働き方改革」で取り上げられているもののように見受けられる。しかし、12月26日の緊急対策で文科省は「学校や教師・事務職員等の標準職務を明確化し,各教育委員会の学校管理規則に適切に位置づけられるようモデル案を作成し,提示」と、今後行うこととして掲げている。このような中でのこの通知は「先走り」というだけではなく、的を外した余計な価値観を与えるものでしかない。

 一体、何をしたいのか、させたいのか、訳が分からない。



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