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共同実施は廃職に道を開く…

愛知県が6級昇格と引き換えに共同実施モデルを提示

 少し前の話だが、12月25日に県教委は「県費負担小中学校等事務職員・事務長の職務の級について」と題する文書とともに、「小中学校事務の共同実施を進めるにあたっての事務処理体制モデル(案)」を示した。話としては既に多くのところで伝えられ、「6級昇格の復活」と「共同実施」が「好意的」に受け止められているようだが、ことはそんなに単純な話ではない。

○ 「6級昇格のための共同実施」が県教委の「つもり」!?

 愛知県では2011年度の標準職務の見直しにより、小中学校事務職員の6級昇格の道は閉ざされていた。もともと行(1)の5・6級は課長補佐級として取り扱われてきたが、2011年度から6級は県庁のグループ班長(部下がいる職務)の職務とされ、県立学校の事務室の長としての事務長はグループ班長の職務で6級相当だが、小中学校の事務長は(複数校であっても)部下がいないので6級相当ではない、という取り扱われ方がされたのである。

 今回、県教委は「仕事のモチベーションをいかに確保させるかという観点から6級昇格を検討してきた。豊橋市の共同実施に着目してきたが、豊橋市の統括事務長は県庁のグループ班長に相当する職務を担当していることから、人事課・人事委員会と協議を行い理解を得た」と6級昇格の道を開いた事情を説明している。

 6級昇格の必要条件は次の4項目で、この4項目を満たすのが総括事務長だ。

ア 担当する職員の指導育成を行うこと。

イ 担当する職員の事務の割り振り、服務に関する事務を処理すること。

ウ 担当する職員の事務の繁閑を平準化し、効率的な業務運営を図ること。

工 担当する職員間の協力を促し、連携を図るため、ミーティングを定期的に実施し、職員間の情報共有に努めること。

県教委は、このことを「総括事務長とは、県職員の課長補佐(グループ班長)に相当する職に就任すること。6級昇格候補者は県教委が市町村教委の定める『学校事務処理等規程』『学校事務の共同実施協議会設置要綱』等により従事していることを確認した上で選考する」と説明した。

 要綱に基づく(中学校区などを基本として、地域の実情に応じた学校で構成する)共同実施ブロックのリーダー業務(上記4点が必須事項)を行う体制が整えられていれば、その市町村には総括事務長を置き、総括事務長は6級に格付けるというわけだ。

 ただ、「中学校区を基本」と言いつつ、「ブロックの最小単位は5校」とも説明の中で言っており、総括事務長が置かれる市町村と置かれない市町村が愛知県内に生まれることになる。また、総括事務長はポストなので、一度総括事務長になると、自ら降任を希望しない限りは、総括事務長が置かれる市町村の、共同実施ブロックリーダーのポストにしか異動はできなくなってしまう。もっとも、共同実施ブロックは市町村教委が設定するのだから、今年度は10校単位でブロックを作り、翌年度は5校単位でブロックを作るという具合にポストを倍増させることは否定されていない。

 このように説明を見ていくと、県教委が示した共同実施モデルは6級昇格のための理屈付けを示したものと言うことができ、「要綱」さえ整えておけば「ナンチャッテ」な感じでお茶を濁すことも可能だ。

○ 共同実施のトレンド(長期的な趨勢)は人員削減

 元々、共同実施が議論され始めた頃は牧歌的だった。定数は加配措置で増加し、上位級への格付けの理由づけにもなった。今回、県教委が示した「6級昇格と共同実施モデル」もそうした流れに沿ったものと言うことができる。

 しかし、時代は変わってきている。「共同実施をすることによって業務の効率化や標準化を行い、空いた時間に教員がこれまで行ってきた業務も担い、教員に子どもとふれあう時間を生み出してもらおう」というのが共同実施のある種の目的とされているが、業務が効率化されて空いた時間が生まれるのであれば、それほど人員を置かなくてもいいのではないか、と財政当局は考えるようになる。教育委員会サイドでも事務職員を置く代わりに教員を置けばいいのではないか、と考えるようになる。

 共同実施先進県と言われてきたところでは、事務職員の臨時的任用の比率が延びてきている。また、事務職員配置数が定数を割り込む一方で教員の配置が定数を上回ってきている。最近では大分県・愛媛県で定数削減・人員合理化を目的とした共同実施が行われ、現在、東京都はその攻防の最中にある。拠点校に常勤職員を配置し、それ以外の連携校には非常勤職員を配置し、トータルで人員を削減していく。更には学級数による複数配置や就学援助加配を取りやめ1校一人体制にしていくという。まさに、人減らしの道具として共同実施が使われている。

 そして3年後には、義務教育費国庫負担金の政令市移管が行われようとしている。既に、名古屋市では、政令市移管をにらんで市職員との任用一本化や共同実施を利用した定数削減・非常勤職員化が既定の事実であるかのように語られている。このことに関連し県教委は「名古屋市のことはともかくとして、県が任命権を持っているところにあっては標準法で定数が決められているので、標準法の改正というようなことがない限り、法定数は守るという立場」としており、もう名古屋市のことは見放したかのような言い方だ。また、名古屋市以外にあっても、愛知県に総務事務センターが導入され、それぞれの職場から庶務担当職員が廃止された時のことを考え合わせると、県教委が「共同実施は市町村がやること」ととぼけて「法定数は守る」と言い切ってしまうことは単純に信頼できるものではない。

○ (定数)標準法は何も守ってはくれない

 今から30年ほど前、「教壇に立つ教員はともかく、そうではない事務職員の給与負担を国が見る必要はない」という大蔵省(現在の財務省)の義務教育費国庫負担制度から事務職員を除外する方針(国庫負担外し)に対して、地方団体や教育関係者の大きな反対の運動が起きた。

 教育の地域間格差を防ぐという趣旨から、教職員人件費の1/2を国が負担するというのが当時の義務教育費国庫負担制度だったのだが、その負担は(定数)標準法に基づく定数分の実支出額の1/2を負担するというもので、義務教育費国庫負担制度は(定数)標準法とも相まって事務職員制度を根底で支える制度としてあった。

 その後、地方分権の流れと合流していく中で、2004年に義務教育費国庫負担制度は総額裁量制が導入されることによって、国庫負担外しは決着していく。総額裁量性は「義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で、給与額や教職員配置に関する地方の裁量を大幅に拡大する仕組み」と説明され、(定数)標準法に基づく定数は国庫負担金を計算する際の一要素に格下げされることになったのである。

 したがって、事務職員分として計算した国庫負担金を実際の配置では教員分に回したとしても「好ましくはないがペナルティを科すことはできない」(文科省)状況になるのである。共同実施先進県で「事務職員配置数が定数を割り込む一方で教員の配置が定数を上回ってきている」実態を紹介したが、「国庫負担金の総額の中で各県が給与と教職員数を自由に決定」できるようになったのだから、何も不思議なことではなくなったのである。

 かつて、義務教育費国庫負担制度と(定数)標準法は事務職員制度を守ってくれていた。しかし、総額裁量制に変わってからは法の枠組みとしては誰も守ってはくれなくなった。ただ、市町村立学校教職員給与負担法で、都道府県が市町村立学校教職員の給与費を負担する仕組みによって、県が様々な規模の市町村間で定数配置の有様に差をつけるのが困難なことから定数削減の一定の歯止めにはなってきていた。

 それが政令市移管となることによって、一つの自治体に国庫負担金が渡されるようになり、その自治体の方針だけで定数は自由に触ることができるようになったのである。地方分権の流れは政令市移管にとどまらず、中核市や特例市への移管にまで議論は進んでいる。

 そうした時には誰も事務職員制度を守ってはくれないのだ。

○ 共同実施ではしゃいでいる場合ではない

 今、事務職員の研究団体や職員団体は、いかにして2014年4月から6級昇格が認められる共同実施を導入するかに関心が向いている。

 義務教育費国庫負担金の政令市移管や、更には中核市・特例市移管や教育委員会制度見直しの動きの中で事務職員制度はズタズタに解体されようとしている。これはそれほど長いスパンの話ではなく、ここ数年の話として受け止める必要がある。

 共同実施にはしゃいでいる場合ではない。事務職員制度解体に手を貸すのか否か、が問われている。















































































 …けど、人員削減というトレンド(長期的な趨勢)に流されていくのだろうな…



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